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山猫姫9の発売と、一年前のこと。

 3月10日に、電撃文庫から「ご主人様は山猫姫・9」が発売になった。
 予約を受け付けていたアマゾンにリンクしていたが、先日書いたとおり、アマゾンは予約分だけで売り切れてしまい、今は中古本が出品されているだけとなっている。

 しかし、その中古本の価格設定が、一冊2000円から980円、というのは驚いた。
 こうやって、新刊が売り切れで需要が高まっているときに、その需要と供給の隙間を見つ
け、品物を売るのが、いわゆる「目端の利く商人」なのだろう。

 発売日に、書店に行けば、まだ定価で並んでいる新刊本を二倍以上の価格で中古本を売りに出す。と言うのは、普通に考えると、買う人はいそうにないように見えるが、アマゾンに、本がない、と言う事実は変わらないわけで、そのあたりを見越した強気の設定なのだろう。

 それにしても、プレミア分を払っても私の本を買いたい。という方がいるのかどうか、その辺は疑問であるが、こういう商売をしている方から見れば、チャンスなわけで、売れればめっけもの、と言うスタンスなのかもしれない。

 アマゾンで売り切れても、一般の書店では山積みかもしれないので、もし、アマゾンで買えな買った方は、書店を探していただければ、と思う。

 さて、あの日から一年が過ぎた。

 一年前のあの日あの時間、私は車に乗って買い物に出かけていた。
 埼玉県北部は風が強く、車の揺れと地面の揺れの区別がつかなかったため、家に戻ってから地震の発生を知った。

 テレビに映る大津波の映像を、私はリアルタイムで見た。
 どれほどの災害になるのか、想像つかなかった。

 三陸は過去に三回ほどいったことがある。
 岩手県の宮古には、部下の結婚式に招待されて一泊した
 三陸鉄道に乗るために旅行したこともある。

 へりのカメラがリアルタイムで映し出す光景を見ながら、私は悔しくて仕方が無かった。

 ――俺はなぜ、警察官を辞めてしまったのだろう。
 警察官を続けていれば、何かができたかもしれない。
 遠く離れた埼玉で、何ができるかと言われれば、何もできはしない。たとえ警察官だったとしても、現場に行けるわけではない。

 そんなことはわかっている。
 でも、私は蚊帳の外なのだ。
 もし、私がまだ警察官をやっていれば、私の力が何かの役にたったかもしれない。
 しかし、今の私には、個人としての立場しかない。

 組織に所属し、組織で動くその力を知っているがゆえに、何の組織にも所属しない個人という立場が、どれほど無力か思い知らされた。

 私は個人的に様々な資格を持っている。だが、その資格が何の役にも立たない。
 ――悔しかった。
 アクティブに動けないことが悔しかった。

 もし、私が現役の警察官だったら、まず動いただろう
 出動計画を立ち上げ、備品を点検し、車両を確保し、糧食を手配し、出動可能人員を把握し、上司と本部に報告する。

 岩手、宮城の地図とデータを用意して、出動が掛かったときに備えて大型免許と検定を持った係員を選抜し、各部署に人員をどれだけ出せるかを打診する。

 応援派遣部隊として実際に現場に赴き捜索に当たる警察官が、動き出すその前に、やるべきことは、山のようにある。

 現場で泥にまみれ、自分の手で捜索することはできなくとも、現場で動く同僚のために動くことができる。

 しかし、警察を辞職した私には、何もできないのだ。
 
 そして、私は心に決めた。
 今、目の前で起きていることに対し、何一つアプローチできない悔しさを忘れないでおこう。
 今、動けなくとも、私の力が役に立つときがある。
 その時を逃がさないようにしよう。アクティブに動こう。

 そしてボランティアとして登録した私は、トラックを運転することになったのだが、それはまた別の話である。

 その後、首都圏でもライフラインが脅かされ、計画停電が行われるようになり、不安な日々が続いた。
 
 当たり前が、当たり前でなくなってしまった日々は、当たり前を維持することの尊さを思い起こさせてくれた。

 災害に襲われた人々を助ける人間は「英雄」と呼ばれ褒め称えられ、栄誉を受けることができる。
 しかし、その災害を引き起こさないように、日々保守点検を続けている人々が「英雄」と呼ばれることは無い。
 それは「当たり前のこと」と言われて終わりである。

 それは「当たり前」のことなのかもしれない。
 感謝する必要の無いことで、取るに足らないことなのかもしれない。

 しかし、彼らが、その「当たり前のこと」を「当たり前に」やっているから、私たちは「当たり前」に暮らして行けるのだ。

 本当の「英雄」とは。「当たり前のこと」を「当たり前」に続け、職務を果たしている人々だと私は思う。

 その人々に感謝することなく、メンテナンスも防災設備も「コスト」としか考えず、削ることで利益を上げることを「当たり前」だと思うような人間が栄誉を得るような価値観は、間違っていると私は思う。

 安全とは、平穏とは、最大限のコストを掛けて、人間が全力で守るに足りるものなのだ。


 
 
    
ご主人様は山猫姫〈9〉帝国崩壊編 (電撃文庫)

ご主人様は山猫姫〈9〉帝国崩壊編 (電撃文庫)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2012/03/10
  • メディア: 文庫



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